個人事務所を平成29年8月に法人化して丸7年が経ちました。
法人化の目的である経営組織の強化や、立地する地域とのさらなる連携、事業の継続性などについて、目的どおりに実行されているか、日々の業務に埋没しながらも今一度検証すべきものと思っております。
話は変わります。
先日ある新聞の書評欄に「所有」に関する哲学者の著書(*)が掲載されておりました。面白そうと早速ぶ厚い書籍を購入し、自分なりに「所有」とはどういうことか、慣れぬ文体に苦労しながら読み進んでみました。
人があるものの「所有者」であるとは比喩的に言われるものであって、実は一時的に預かる「受託者」であるという。
つまり自分は所有者と称しているが、実はその人に一時的に託されたものであり、期限のある「預かっている」状態にあるという。
これは、従来からの所有という概念ではなく、一時的な預かりや、委託や寄託などをいい、さしあたりとか、とりあえずなど、一過的な状態であることをいう。さらに預かりの状態であるがゆえ、自己の所有物として意のままにできる自由処分権などもおのずと制限されるという。
著書の中での具体的な「受託者」の例としては、幕藩体制における藩の当主とか、代々続く商家の当主とか、歌舞伎役者等の当代などであるという。
所有とは、この本の視点に立つと、従来からの自分の所有との感覚が実はある意味錯覚であり、それに基づく相続争いなどの騒擾は誠に残念なものに感じてしまいます。
さて現在、税や会計のサービスについての契約をいただいている顧客の皆様(委託者)や、その契約に基づく役務の提供者たる事務所(受託者)との良好な関係の維持について、上記の視点からも更なる検証を加えるべきものと思っております。
委託者及び受託者の内部状況は日々刻々と変化しております。時の経過や社会の変化に対してその時の最適解を求めていく、常に悩みは尽きないものです。
*鷲田清一著 「所有論」講談社 を拝読させていただきました。